巨人の靴

時間に物差しを当てた時から

この世界は狂ってしまった

過ぎてしまった時と

これから来るべき時に

何一つ同じものはないのに

僕が感じた気持ちと

誰かの気付いたきらめきが

同じことなんてありはしないのに

 

変わり行くことこそが

この世界を支える巨人の片足

それが靴を履く必要などありはしないのに

 

僕たちは忘れてしまった

小さな砂粒と夜空の星のきらめきが

同じ素材で出来ていたこと

両手で受けた雨水に

海と同じだけの広さがあること

 

ねむの木の花が咲いている

花から花へ渡る蜜蜂になって

広い荒野を飛び回りたい

前も後ろもなく

ゆえに前進も後退もない

いのちは進まない

ただ揺らぐだけの

天使の髪を束ねたような

ねむの木の花