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詩情以上の思索は要らず

散文以上の詩情も要らない

求めない人に話す言葉もない

ただあるがままの暗黒と

そこにある結露に触れる

それ以外の何者でもない

ただ僕は力で知恵で

思いやりであなたへの愛で

 

たとえ道を違えたとしても

その足を使い棄てはしない

見ることのできた景色の数だけ

あの集合住宅の窓を数えられる

 

淡い輪郭の縁を歩きながら

ぬかるむ足元を感じている

君の話してくれた夢の話が

頭の片隅に思い浮かんだ

 

それはやわらかい雲の上を歩く話

あたたかい毛布の上を転げる話

何故だか昔の友人と

雨水の味を語らったって

何故だか遠くに見える虹が

消えないものだと知っていたって

 

僕の思索や詩情や散文や

ちょっとした世間話

どれもきっと

君に愛を伝えるためのものなんだって

君はそうして伝えてくれた

淡い輪郭をなぞりながら

思索と詩情をまぜながら

 

拙い言葉で拙い思いを

静かに触れるよう伝えたい

見える言葉で見えない思いを

手放すように伝えたい