月の匂い

夜半、目が覚めて

何かの匂いを感じた

 

ベッドからなかば起き出して

あたりを見渡すと

カーテンの隙間から

白い光がこぼれている

 

透明なその匂い

焦点を合わせて

その滲みを見つめてみる

小さな妖精が舞うような

そしてその鱗粉が散るような

 

暗い森の中

小さく流れる水に漂う

きらめきの断片

その中の物語

寄せ集めても

一編の小説本に

なりはしない

 

月の匂い

満月のそばかすと

同じよう滲む

頬の感触を

まだ僕は忘れない

 

月の匂い

丸い時

感じる、

音のしない

その手触りを