あの時見つけた石英のかけら


薄雲の敷き詰めた空の下、
避雷針の立ち並ぶあのビルの屋上で仰向けに。
表明こそが愛なのだと、それを待つ。
力を込め握り締めた手のひらをおもむろに解き、ぞっとして
今がその時かもしれない、と
露わになった背中をまるで刃物でなぞる様なこそばゆさに汗がにじむ。

行き交う人・車や錯綜する街宣広告の色彩、
その圧倒的な情報の気配とコンクリートのざらついた感触に後頭部だけで触れ合いながら、
目はただ薄雲を見つめてた。

 

忘れ物はないかい
ハンカチ、ティッシュ、ケータイ電話
うるさいなあ、わかってる
駆け足で家を出て
少し離れるまでそのまま走る

少年の足が運んだここはどこだろう?
思い出ならばたくさんあるよ。
適当なまとまりをもった時間の塊を
ガラガラと崩し、石英の欠片を見つけたら、
自分がどれだけ些細なものばかり見ていたか気づく。
みんな大きな石を持ってた。
自信満々で何を言っただろう?
惨めでもみんなに見せてみよう
今なら大丈夫、みんなそこにいてくれる
みんな知ってる、誰も驚かない
笑って石英を見せて、
なんで、それが良いと思ったかちゃんと話して。
それでみんなみたいな石をちゃんと探すのさ、
みんな思ってたよりずっと頑張ってるんだよ

 

僕はなぜこんなところで
こんなことをしてるのだろう
一面の灰色に避雷針が放射状に立っていて
自分を捧げて何か探そうとしてたのかな
休み時間が終わるから。
ふほっと笑って君のところに帰るんだ。