遡求

電気信号になった意識が、全身の物理的な回路を一斉に駆け巡っている。

身体の隅々に、掃き残した埃のように溜まっていた記憶の粉が宿っている。

一つ一つその電気で纏い取って行った。

鱗粉をまとった蛾のような様相だね。

ふらふらばりばりと、まるで機械のようだ。

柔らかい毛に触れてはいけない。

手のひらの皮膚は、思っているより透明なのだ。

ゆっくり進む蝸牛のように動くんだね。

そうしてるうちに溶け出した思いは、やっぱり手のひらでは受け止めきれないのにね。

大切なものが何だったのか追い求めながら、本当に大切なものがやっぱり削れていくだけなのさ。

そればっかりになっちゃうね。