告発

 

とまらない景色をただ一人たちどまって、眺めていた。

街角の風景。横断歩道を早足でわたっていく人たち、その上で流れては徐々に色をかえてゆく空。

そうして、風に波打つ青い草原。遥か遠い丘の上。その、そのさらに遥か遥か遠くには、もっと遥かに遥かに遥かに遠く遠く遠い海。そのもっと先には星空と月、それに照らし出された雲。

水面に、柱がたった。

 

 

横断歩道を早送りでわたっていく人たち。固いアスファルトを足の裏で叩きながら、そういった映像を思い浮かべているのだろうか。何もかも忘れ去られた遺跡のような、静止した遠景を。

何もかも忘れ去られた、彼らだけの町と空とそして丘。とまり続ける景色を、とまれない人々はただずっと見ていたいのだ。

 

 

水に沈む砂のように止まろうとする運命を、そうしてかき乱すことで、直視ができない。彼らは恐れている。