なぎさにて

休日の朝駅のホームで

傘の先をひきずって歩くおじいさんがいた

(擦れる音がする)

時々思う悲しみはどこに

悔しさは嘆く海の底まで

 

背筋を伸ばして日々を見つめて

朝、日差しの眩しさに目が眩んで

勝手に滲むくすんだ色が

いったいどこから

悔しさは嘆く海のそばに向かって

そのまま


リビングの掛け時計をめっぽうに壊した

小さな子どもが泣きながら叫んだ

頭くらいの大きさの石を

落として沈めた

いったいどこに

悲しみを嘆く海の底まで

そのまま

カラン

カランってなんや?伽藍とちゃうんか?

伽藍堂というのは、大きい木のウロのことで、

無限遠に広くて高い

湿度がひっそりと音を吸い込んで、

命を盗む気配がする

だが、ほんとうは、

多くの生物が潜んでいる

活き活きとした野のあおい光は、

視覚に頼って生きる我々の安全の証だから、

俺の命と、彼らの命は、本質的に相容れない

 

静けさが滴り落ちるように被さってくる

この時空上に、俺はただの一人

与えられた肉体だけを抱いて

立ち向かえというのか

人の姿を借りて現れた

命の化身を象った黄金の

気配を察してしまえば

あとは表象を持ち去られる

 

そこに潜む花弁に少しずつ齧られる

そのことにも気づかないまま

 

押さえるカランも、ひねるカランも

吐き出すものは変わらない

肌を舐めるように駆ける

ひとりごとをつぶやいてる君と僕だな