指紋

求められることの心地よさにかまけて

伝えられたこと 感動したこと 響いたこと

心のそこから思ったこと

やってみたいと感じたこと

 

美しかったあの景色 あのウェブサイト

あのバンドのあの写真

おれならこうする、って書いてみた日記

こだわりたかった思いが

かすれてくすんでしまったけど

また磨いてみようと思った

また輝けばいいのだけれど

まだ誰かに響けばいいのだけれど

うすあかり

夜行列車の車窓から

流れる街の明かりをみて

孤独に向き合えなくなった心に

気づいてしまった

 

静けさはもう冷たくない

体温と同じあたたかさの中に

安らぎはとどまっている

夜の闇はもはや透き通ってはいない

星明かりをたよりに澄んだ湖の底を歩いた

そんなことも思い出せなくなっていた

 

うすいオレンジ色の明かりが

乳白色のガラス球に散乱し

部屋中を染め上げる

まるで砂埃がこの街中を

覆い尽くしているようだ

 

実線で切り出された

孤独はもう存在せず

体温の中で癒着した

君と僕のこころだけ

 

眠るときはいつも背中合わせだった

歌うときはいつも調子を合わせていて

踊るときはいつも手を繋いでいた

 

重ね合わせのふたり

ゆらいでかすれて

輪郭線がぼやけていく

 

 

...

 

 

電球のあかりに照らされた

中合わせのふたり

持ち寄った孤独なこころの

輪郭を重ねて 揺らいで

そのあたたかさに

水底の砂は舞い上がっていく

 

湖の底は 夜の闇は

もう見通すことはできない

あたたかい明かりの中にいるから

輪郭がにごってしまったのは

夜ではなくて僕の方だから

 

だからもう

闇の中を生きることはできない

あたたかい光の中で

孤独ではいられない

もうひとりではいられないのだから

もうここにとどまることはできないのだから