すり鉢状の心の底で、羽を一掴みつぶし、つぶす。
やあやあ。話をしようか。
何の話を今日はしよう。
伝説の話をしよう。昔話をしよう。

寿詞の筵は、うたてならず、躯の鳥栖は、不真面目で。
夜空に円を描くように、「鶖」は旋回した。
まぁるい尾びれ、背中の鱗紋様、くちばしの黒い艶やかさや、足の力強さ。
それは伝説の中の魔物であって、昼は空の青を均し、夜は星座を描くとされている。日夜あきたらず、飛びつづけているのだ。

水鏡よろしく、月のうつる水面をみた。
ガサガサと茂みをかき分けて、もうないか、など思いながら、目をこらすと、あった!
息をのむ青い泉。
透き通っているのに、手を透かせない、深い深い青色。
それが空の秘密だった。それを夜空に散りばめていたのだ。
空の水面に手をつけた。深く深く手を伸ばした。どこまでもなにもなくて、どこまでも不透明な、青い泉。

鶖は言った。
「夜毎に目が見えなくなる。本当はこの空は、もっともっと、透き通っていた。だけど、泉の水を逃さなくてはならなかった。ついにはこの空でさえ、この有様だ。昔の姿を思い出したくて、夜も寝ずに飛んでいるのさ。」
鶖はこちらをじっと見て、また飛んだ。
星と星の合間を縫って、また円を描き、旋回していった。